オーストリアのヴェルター湖畔・ペルチャッハ滞在中に創られた本作は、明朗快活で伸びやかな曲想を有する。リヒター指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演され、多くの聴衆から絶賛された。ベートーヴェンの《交響曲第6番『田園』》に準えて、しばしば「ブラームスの田園交響曲」とも称されたほどである。ペルチャッハでは、《ヴァイオリン協奏曲》や《ヴァイオリンソナタ第1番》も生み出されており、ブラームス……
われわれはみな音楽を必要としている。音楽なしに生きてゆくことはできないのである。本作は1801年から1802年4月にかけて主に作曲されたと言われており、1803年4月5日にウィーンにて作曲者本人の指揮で初演された。重厚さの中に、希望に満ち溢れるような明るさを感じさせる本作だが、その作曲・初演は、ベートーヴェンが聴覚の急速な喪失という困難に直面し、懊悩していた時期と重なる。では、なぜ深い絶望の中にあ……
モーツァルトにとって、オペラ(歌劇)は最も魅力的なジャンルであった。人間の感情を歌で表現することに情熱を抱いていた彼は、生涯で23編のオペラを残している。その13番目に当たる『イドメネオ』(1781)は、『フィガロの結婚』(1786)、『ドン・ジョヴァンニ』(1787)などと並んで、彼の7大オペラに数えられる。歌、演技、その伴奏から構成されるオペラは、1600年ごろにイタリアで誕生し、その後ヨーロ……
「スター・ウォーズ」とは、映画製作者のジョージ・ルーカスが製作した映画から始まり、多彩なメディア展開をされているスペース・オペラの総称である。本組曲はその中でも、映画で使用された5楽曲を組曲として扱うものである。今でこそSF映画は大衆娯楽として広く受け入れられているが、公開当時、SF映画は売れないとされていた。例えば、当時最大のヒット作であったSF映画はスタンリー・キューブリック監督の『2001年……
本作は、映画『ハウルの動く城』(2004)に登場する映画音楽を抜粋したメドレーである。シンフォニック・ヴァリエーション『メリーゴーランド』の名の通り、映画全体を貫くテーマ曲である『人生のメリーゴーランド』を中心に、映画で登場した8つの曲から成る。映画『ハウルの動く城』は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名の小説を原作とし、宮崎駿監督のもとスタジオ・ジブリによって製作された。原作では、呪いで老婆にさ……
『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊*1」を元に作られた映画である。舞台は、17世紀のカリブ海のとある港町。美しい娘エリザベスは昔海上でウィルという少年を助け、その時彼が身につけていた黄金のメダルを貰っていた。そんなある日、ブラックパール号を名乗る海賊たちが街に現れ、エリザベスが拐われてしまう。海賊の目的は、彼女が持っているメダルだった。そこで、成長し……
このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。「そりゃスゴイ、お化け屋敷に住むのが父さんの夢だったんだ」と、こんなことを言うお父さんの娘が、小学六年生のサツキと四歳のメイ。このふたりが、大きな袋にどんぐりをいっぱいつめた、たぬきのようでフクロウのようで、クマのような、へんないきものに会います。ちょっと昔の森の中には、こんなへんないきものが、どうもいたらしいのです。でもよおく探せば、まだきっと……
今回は、OrchestraCanvasTokyo(OCT)としては初めて、映画音楽を扱う。そこでまずは「映画音楽」そのものについて考え、その後に各曲の解説を並べる。もちろん、お好きな曲の解説からお楽しみいただくこともできる。物語を創り、演じる。文明の草創期から紡がれてきたこの営みにおいて、「映画」の台頭は大きな転機となった。芸術が受ける時間的もしくは空間的な制約を打ち破ってしまったのだから…スクリ……
ショスタコーヴィチが生まれた1906年は、ロシア第一革命の翌年に当たる。ショスタコーヴィチの一家は革命運動に共感しており、幼少期から彼は常に革命の精神にさらされてきた。「二月革命」「十月革命」(1917)を経てレーニン率いるボリシェヴィキが権力を掌握していく頃、ペトログラード音楽院にて本格的な音楽教育を受け始める。出世作となる《交響曲第1番》(1925)は、作曲科の最終試験で書かれた。楽壇に躍り出……
プロコフィエフはショスタコーヴィチらと並び20世紀ロシアを代表する作曲家である。新古典的楽曲から革新的楽曲まで幅広い作品を残しており、その特徴を一概に語ることは難しい。出身は現在のウクライナ、ドネツィク州の農村であるソンツォフカであり、ロシア革命を受けての亡命や、ソヴィエト共産党中央委員会による雑誌批判に端を発する文化弾圧”ジダーノフ批判”の対象として一部楽曲の演奏を禁止される等、政治的に波乱の生……