# チャイコフスキーの記事:3件
ロシヤの民衆の最も重要で、最も根本的な精神的要求は-場所と対象を選ばぬ、飽くことを知らない不断の、苦悩の要求にほかならないと、わたしは考える。1870年代のロシアは、国民の苦悩が鮮明に浮かび上がった時代であった。知識階層の学生たちは、民衆の犠牲のうえに大学で学ぶことに罪の意識を抱き、「ヴ・ナロード(人民の中へ)」運動を展開し、農民に対する社会革命思想のプロパガンダに注力した。そこには、未来を切り開……
ロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキンが1820年代に執筆した長編小説『エフゲニー・オネーギン』は、当時のロシア貴族社会の風俗を背景に、青年オネーギンと純真な田舎娘タチヤーナの悲恋を描いた作品である。詩の形式で書かれたこの小説は、友情や嫉妬、社会的虚飾といった普遍的なテーマを織り込みつつ、登場人物の感情の機微を細やかに描き出し、発表以来ロシア文学を代表する古典として高く評価されてきた。187……
チャイコフスキーの旋律美が多くの人々を魅了し続けてきたことは言うまでもない。ある団員が云うには、チャイコフスキーは“音階を音楽に変える天才”だそうだ。確かに彼が生み出す旋律は、音階の要素を基調に多彩な装飾が施されており、息を呑むほどに美しく、哀しく、そして慈愛に満ちている。一方で、赤裸々な感情移入を厭わない作風は当時のロシア人作曲家の中では異色であり、厳しい批評にさらされていたのもまた事実である。……