Orchestra Canvas Tokyo Blog

# 曲目解説の記事:45件

ジョン・ウィリアムズ / 『スター・ウォーズ』組曲

「スター・ウォーズ」とは、映画製作者のジョージ・ルーカスが製作した映画から始まり、多彩なメディア展開をされているスペース・オペラの総称である。本組曲はその中でも、映画で使用された5楽曲を組曲として扱うものである。今でこそSF映画は大衆娯楽として広く受け入れられているが、公開当時、SF映画は売れないとされていた。例えば、当時最大のヒット作であったSF映画はスタンリー・キューブリック監督の『2001年……

2024/9/9

久石譲 / シンフォニック・バリエーション『メリーゴーランド』

本作は、映画『ハウルの動く城』(2004)に登場する映画音楽を抜粋したメドレーである。シンフォニック・ヴァリエーション『メリーゴーランド』の名の通り、映画全体を貫くテーマ曲である『人生のメリーゴーランド』を中心に、映画で登場した8つの曲から成る。映画『ハウルの動く城』は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名の小説を原作とし、宮崎駿監督のもとスタジオ・ジブリによって製作された。原作では、呪いで老婆にさ……

2024/9/9

クラウス・バデルト / 『パイレーツ・オブ・カリビアン』より

『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊*1」を元に作られた映画である。舞台は、17世紀のカリブ海のとある港町。美しい娘エリザベスは昔海上でウィルという少年を助け、その時彼が身につけていた黄金のメダルを貰っていた。そんなある日、ブラックパール号を名乗る海賊たちが街に現れ、エリザベスが拐われてしまう。海賊の目的は、彼女が持っているメダルだった。そこで、成長し……

2024/9/9

久石譲 / となりのトトロ

このへんないきものは、まだ日本にいるのです。たぶん。「そりゃスゴイ、お化け屋敷に住むのが父さんの夢だったんだ」と、こんなことを言うお父さんの娘が、小学六年生のサツキと四歳のメイ。このふたりが、大きな袋にどんぐりをいっぱいつめた、たぬきのようでフクロウのようで、クマのような、へんないきものに会います。ちょっと昔の森の中には、こんなへんないきものが、どうもいたらしいのです。でもよおく探せば、まだきっと……

2024/9/9

「映画」と「映画音楽」について

今回は、OrchestraCanvasTokyo(OCT)としては初めて、映画音楽を扱う。そこでまずは「映画音楽」そのものについて考え、その後に各曲の解説を並べる。もちろん、お好きな曲の解説からお楽しみいただくこともできる。物語を創り、演じる。文明の草創期から紡がれてきたこの営みにおいて、「映画」の台頭は大きな転機となった。芸術が受ける時間的もしくは空間的な制約を打ち破ってしまったのだから…スクリ……

2024/9/9

ショスタコーヴィチ / 交響曲第10番 ホ短調 作品93

ショスタコーヴィチが生まれた1906年は、ロシア第一革命の翌年に当たる。ショスタコーヴィチの一家は革命運動に共感しており、幼少期から彼は常に革命の精神にさらされてきた。「二月革命」「十月革命」(1917)を経てレーニン率いるボリシェヴィキが権力を掌握していく頃、ペトログラード音楽院にて本格的な音楽教育を受け始める。出世作となる《交響曲第1番》(1925)は、作曲科の最終試験で書かれた。楽壇に躍り出……

2024/6/29

プロコフィエフ / ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 作品26

プロコフィエフはショスタコーヴィチらと並び20世紀ロシアを代表する作曲家である。新古典的楽曲から革新的楽曲まで幅広い作品を残しており、その特徴を一概に語ることは難しい。出身は現在のウクライナ、ドネツィク州の農村であるソンツォフカであり、ロシア革命を受けての亡命や、ソヴィエト共産党中央委員会による雑誌批判に端を発する文化弾圧”ジダーノフ批判”の対象として一部楽曲の演奏を禁止される等、政治的に波乱の生……

2024/6/29

ショスタコーヴィチ / 祝典序曲

《祝典序曲》は、ソヴィエト共産党中央委員会からの委嘱作品として作曲され、1954年11月、第37回ロシア革命記念日の祝典で初演された。本作は、ソ連の政治的転換期の中で発表され、共産主義の祝祭的な雰囲気を纏いつつも、ショスタコーヴィチの胸中に秘められた機微を示唆するものとなっている。本作が発表される前年の1953年3月5日、ソ連の最高指導者であったスターリンはその生涯を終えた。スターリンはロシア革命……

2024/6/29

エルガー / 交響曲第1番 変イ長調 作品55

エドワード・エルガーの交響曲第一番は、1908年に完成した。重要なことは、この時点でエルガーがイギリスを代表する作曲家であったということだ。1899年の「エニグマ変奏曲」から1919年の「チェロ協奏曲」までのこの時期は、ベートーヴェンよろしく「傑作の森」とも呼ばれるほどに、エルガーにとって充実していた。その作品群の中でも、交響曲第一番がイギリスにとって、そしてエルガーにとっても象徴的なものだったこ……

2024/2/16

エルガー / 独創主題による変奏曲『エニグマ』

この「謎の」作品は、親しい人との戯れに端を発し、やがて彼の運命を変えることになる。エルガーの妻、キャロライン・アリス・ロバーツは、彼の人生に大きな影響を与えた人物の一人である。名家の生まれで8歳年上のアリスは、聡明でロマンチックな、芯のある女性だった。無名の音楽家との結婚に強く反対した家族から勘当されるも、揺るぎない愛情で夫を献身的に支えた。2人の生活を綴った日記の中で、アリスはこう記している。「……

2024/2/9