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エドワード・エルガーの交響曲第一番は、1908年に完成した。重要なことは、この時点でエルガーがイギリスを代表する作曲家であったということだ。1899年の「エニグマ変奏曲」から1919年の「チェロ協奏曲」までのこの時期は、ベートーヴェンよろしく「傑作の森」とも呼ばれるほどに、エルガーにとって充実していた。その作品群の中でも、交響曲第一番がイギリスにとって、そしてエルガーにとっても象徴的なものだったこ……
この「謎の」作品は、親しい人との戯れに端を発し、やがて彼の運命を変えることになる。エルガーの妻、キャロライン・アリス・ロバーツは、彼の人生に大きな影響を与えた人物の一人である。名家の生まれで8歳年上のアリスは、聡明でロマンチックな、芯のある女性だった。無名の音楽家との結婚に強く反対した家族から勘当されるも、揺るぎない愛情で夫を献身的に支えた。2人の生活を綴った日記の中で、アリスはこう記している。「……
エドワード・エルガーは1857年、イングランド中部にて生を享けた。当世(ヴィクトリア期)のイギリスは、政治・社会双方の面において世界を先導しており、1851年には世界最初の万博博覧会を催すなど栄華を極めていた。他方、管弦楽の分野においては、盛期・後期ロマン派音楽を指導するような作曲家はほぼおらず、民俗音楽に立脚した作品が主流であった。エルガーは、楽器商の父により幼い頃からヴァイオリンやピアノの教育……