#第8回定期の記事:3件
チャイコフスキーの旋律美が多くの人々を魅了し続けてきたことは言うまでもない。ある団員が云うには、チャイコフスキーは“音階を音楽に変える天才”だそうだ。確かに彼が生み出す旋律は、音階の要素を基調に多彩な装飾が施されており、息を呑むほどに美しく、哀しく、そして慈愛に満ちている。一方で、赤裸々な感情移入を厭わない作風は当時のロシア人作曲家の中では異色であり、厳しい批評にさらされていたのもまた事実である。……
シベリウスはフィンランドを代表する作曲家であり、フィンランドの過酷な自然や幻想的な民族伝承、住民の厳しく孤独な心を、有機的な構成の中にあってなお感じさせる作風が特徴である。また、ロシアの支配にあえぐフィンランドにおいて、フィンランドの民族叙事詩に基づく作曲等を通じ、ナショナル・アイデンティティの探究に寄与した人物としても名高い。1900年のヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団パリ万博公演での《フィ……
ファリャは、スペインを代表する作曲家の1人である。バレエ音楽『三角帽子』は、稀代のバレエ興行師ディアギレフがP.アラルコンによる短編小説『三角帽子』をもとに手がけたバレエ作品のために作曲された。1917年の初演当初は第一次世界大戦中ということもあり、小規模のパントマイムとして上演された。その後大編成オーケストラ用に改編され、1919年にバレエ音楽として完成に至った。バレエ音楽『三角帽子』は2つの組……